親愛なるヘレンへ、幸福な結婚とは様々な手の一生の物語であるように思います。
それはまず、相手のキラキラする金の指輪をはめる震える手で始まります。
そして相手の恥ずかしそうな手をそっと握りしめる手。
混雑した街で、あるいは映画館の中で握り合う手。
ふざけて相手のお尻をポンとたたく手、
ウエーブした髪にそっと置く手。
そしてそう度々はないけれど、相手への怒りで握りしめたこぶしの手。
生まれたばかりのちっちゃな手を包み込むうっとりした手。
お腹を空かして待つ人たちのために夕食をこしらえる忙しい手。
落胆している手をそっとたたいて励ます楽観的な手。
相手と喜びも悲しみも分け合う手。
病む手をさする健康な手。
肩に置かれた優しい手。
 ”あなたが必要な時は、いつでもここにいますよ”
 という意味を込めながら・・・・。
悲しみに打ちひしがれた手を支える力強い手。
涙にぬれた手に指をからませる、同じように涙にぬれる手 。
祈りの気持ちを込めてつなぎあう手。
そして最後に、もう動かなくなった手の指から、光の失せた金の指輪をそっと抜き取る
震えた手。