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焼く前
 
 
 
 
 
 
 
見習い時代、生地を仕込んでいて、オーブンに入れて焼く前から、
「ダメだ!、こんな生地を作って・・・」と怒られました。
見習いですから、手順を守り、自分なりにやったつもりでも、
なかなか上手くいきませんでした。でも、なぜ先輩は焼く前から
良いか、悪いかパッと見ただけで解るのだろうと思っていました。
2年くらいやった頃から、少しずつ解ってきました。
先輩は生地の色つやを見ていたのです。
良い生地というのは、だいたいの生地に言えるのですが、
何とも言えない、いぶし銀の様な光沢があって、ふっくらしていて
焼く前から美味しそうな感じなんです。(あくまでも”感じ”としか説明できませんが)
逆に悪い生地は、分離したような(これは最悪)水っぽい様な、
盛り上がりに欠けて、見た瞬間に美味しくなさそうと言う感じ。
良い状態を作り続けられるようないなるには、やはり5年は掛かるでしょう。特にフルーツケーキなどのバターケーキは難しいです。
本当に解ってくると、仕込んでいる生地が「今卵を入れて。もう少し熱を加えて。もう少し泡立てて。今が粉の入れ時。」
と言っているのが聞こえてくるようになります。
焼いたときも、別にタイマーなど使わないで、生地が「今焼けたよーー」
と聞こえてきます。先輩に「生地とオーブンと会話が出来たら一人前」と
良く言われた物でした。
ここまで行くにはやはり10年以上は掛かります。
それでも、失敗する事はあります。気合いが足りないとき。
いい加減にやるとそれなりの、、「良い仕事をしよう!!」
と気合いを入れてやるとやはり良い物が出来ます。
仕事はすべてそこにつきます。